迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

地に残る未練(三)


「自覚……」



 あの時、自転車は誰が乗ってきたように重くなって動かなくなった。

 もし何かが乗っているのだとすれば、チャイルドシートの部分と考えるのが普通だろう。

 私はもう一度目をこらし、自転車を見る。ここに何かいる。私にも見えるはずだと、自分に言い聞かせながら。



「……モヤ? ……なんだろ……見えそうで、ん? 人なのかな?」



 うっすらと白いモヤの影が見てとれる。

 ただそれが何かというと、イマイチわからない。

 自転車にちょこんと座るようにその形はある。



「ま、それだけ見えれば合格だろ。それは元々、すごく弱い零体のようだからな」

「ふーん。弱い零体……って、お化けってこと?」

「んまぁ、そんなもんだ。生きているものが死ねば、皆そうなる。ただ、この世に未練のない者は地上に残ることはほとんどなく、上にあがるんだがな」

「ということは、この子は未練を残して亡くなった子ってことなのね」



 姿ははっきりとは見えないものの、ここに座るということ自体、幼い子なのではないかと思える。



「でもそれだけじゃあ、どうにも出来ないし……」



 見えたところで、どうしたものなのかというところだ。

 しかし、このままではいけないことだけは分かる。

 ただこの子の未練になったものを探すとしても、この子が誰なのかが分からなければ対処のしようがない。



「携帯で検索したって、過去の事故がどこまで出てくるのか……。ん-」



 事故が出てきたところで、名前が分かるとも限らない。

 どうしたらと思う私の目の端に、苔むす道祖神が見えた。
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