淋しがりやの足跡
たんぽぽの花束を渡したこと、私も覚えています。
原っぱで遊んでいた近所の子ども達が面白がって、たんぽぽを摘むのを手伝ってくれました。
実は、リボンで結べばいいとアイディアをくれたのも、その子ども達です。
君があの花束を部屋で飾ってくれていたことは、今初めて知りました。
君と結婚の約束をした頃の思い出ですね。
遠い昔ですが昨日のことのように感じられて、本当に不思議です。
史郎より』
『史郎さんへ
今日の帰り際に、看護師さんから史郎さんが微熱を出していたことを聞きました。
ちっとも知らなくて驚いて、しばらく看護師さんへの返事を忘れてしまったほどです。
体調の変化など、きちんと教えてくれないと困ります。
暖かくなってきたとはいえ、朝晩はまだ冷えます。
ゆっくり休んで、無理はしないようにしてください。
時子より』
『時子へ
まさか交換ノートの中で叱られるとは思わず、私も驚いています。