ライム〜あの日の先へ
「すみません、遅くなりました。
あらリンちゃん、もしかして喘息?大丈夫?」

そこへ現れたのは、ハルトの母だった。ハルトを受け取りながら、咳をしていた凛に心配そうに声をかけてくれた。

「そうなんです。今日みたいな日はダメで」
「顔色も良くないわ。かかりつけの病院は?」
「光英大学病院なんですけど、もう時間外なので」
「時間外か……ちょっと待っててください」

ハルトの母がどこかへ電話をかける。

鈴子はひときわ大きく咳き込んだ凛の背中を優しくさすった。
何かをしてくれようとしているハルトの母には悪いが、少しでも早く帰って休ませてあげたい。

「喘息の薬は飲んでますから、大丈夫です。ハルトくんママ、ご心配おかけしてすみません」
「今の咳が電話越しに聞こえて、すぐに連れてきてって。光英大学病院です。先生は車?」

どうやら病院に電話をかけてくれていたようだ。時間外でもすぐに診てくれるとなればありがたい話なのだが。

「家からは徒歩で通っているんです。
ハルトくんママ、病院にお電話してくださったんですか?ありがとうございます」

光英大学病院はここから一駅隣りにある。こんな状態の凛を抱えて電車には乗れない。
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