ライム〜あの日の先へ
「スズコ、タクシーを呼ぶよ。リン、頑張れよ!」

見かねたマイケルが大急ぎでタクシー会社の電話番号を調べ始める。

「タクシーを呼ぶ時間がもったいないわ。私は車なんです。病院まで送りますよ!」
「え、でも……」
「いつもハルトがお世話になっているリンちゃんのためだもの、喜んで」

なんともありがたい申し出ではあるけれど、預かっているお子さんの親に病院まで送ってもらうなんていいのだろうか?
鈴子は悩んでしまう。

「なら、正門ぎりぎりに車を寄せて。オレ、車通れるように門を開けてくる」

そんな鈴子の悩みなどよそに、マイケルが正門の鍵を手にして雨の中飛び出していく。

「駐車場から車をこっちに回してもらいます。先生は、荷物をまとめてください」

有無を言わさないほど、やや強引にハルトの母とマイケルがテキパキと行動に移す。
苦しそうな咳を続ける凛のためにもありがたく厚意を受けることにした。


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