ライム〜あの日の先へ
「ごめん、おにい。もう、大丈夫」
「俺はいつでも鈴子の味方だからな」
「うん、ありがと」

轟音とともに、飛行機が向きをかえ滑走路へと向かっていく。
鈴子はもう振り返らなかった。幸せな思い出をすべて胸の一番深いところへと押し込んだ。

今は苦しくて切ない思い出たちも、時間と共に色褪せ、懐かしさへと変わっていくから。

大丈夫。
私は一人じゃない。

鈴子は一成を見上げた。

いつもと変わらない穏やかで優しい兄の微笑みがそこにあった。


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