ライム〜あの日の先へ

あなたに会えない

※※※




本社ビルの前で移動用の車から降りて、零次は一つ大きなため息をついた。

「あっついな」

ずっと空調の効いたビルの中か、車の中にいたので外の暑さに気づいていなかった。真夏の東京の暑さはすべての思考を奪いそうなほどに不快だ。

一気に吹き出した汗を拭おうとポケットからハンカチを出した。するとハンカチと一緒にチリンと音をたててキーケースが歩道に落ちる。

「おっと」

キーケースを拾おうとかがむと、歩道の端になにか光るものを見つけた。

金色に輝く鈴だ。

キーケースから取れてしまったのだろう。拾い上げてポケットにしまう。
ポケットの中でチリン、と音がなる。鈴の音は零次に安心と元気をくれた。いつでも鈴子がそばで応援してくれるような気持ちになれる。


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