ライム〜あの日の先へ
「ありがとう、一成。しんどくなったらさ、また電話していい?」

『零次の元気そうな声が聞けてよかった。
でも。
今の零次に必要なのは、俺たちじゃない。
一条の御令嬢のような高みにいる人達との繋がりこそが必要なんだ』

電話越しの一成の声が変わった気がする。力が抜けたように、低く、弱くなった。

今までのようには付き合っていけない。
そう告げられた気がした。
そんな不安を吹き飛ばすように零次はあえて声を高く明るく答える。

「やめろって。肩書きが変わっても、俺が一成の友達ってことに変わりはないんだ。鈴子のことも、かけがえのない思い出だし」

『思い出。そう、社長にとって我々は思い出。
鈴子にもそう伝えておきます』

「一成?」

『社長、お電話はこれきりにしましょう。
これ以上社長の貴重なお時間を頂戴するわけにいきません』

ついに零次が恐れていた一言が一成から発せられた。
ひゅっと一瞬息を飲んで、零次はすぐに首を横に振りながら一成をつかもうと言葉をつなぐ。

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