ライム〜あの日の先へ
第四章 動き出した運命

リグレット

※※※


鈴子の姿が病院内に吸い込まれていくのを確認してから、零次は車を発進させた。

だが雨のせいか道路はひどく混んでいる。すぐ渋滞にはまってしまった。


零次の頭の中は鈴子のことでいっぱいだった。
小学生の頃に偶然遭遇した望田家事件のあった日から、一成に絶縁を言い渡された日まで、鈴子との思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡っていく。


「忙しいのにありがとう」

琴羽の声が零次を現実に引き戻す。
雨粒のついた車のフロントガラス越しに見える景色で、車がさほど進んでいないことに気づく。
琴羽とハルトを乗せているというのに、ぼんやりしてしまったことを反省した。

「……いや、会議が長引いたのはこっちのせいなんだから、当然だよ。
ハルトのお迎え遅くなって悪かった」

五嶋商事の社内で行っていた会議が予定以上に伸びてしまい、琴羽には迷惑をかけた。タクシーで移動しようとしていた琴羽に、お詫びをかねてハルトの迎えを申し出たのだ。

「それにしても、この車にチャイルドシートが付いていたなんて」
「あぁ、これ。明日、大阪支社長が孫を連れて東京に来るんだ。東京案内する約束しててさ、準備しておいたんだ。いいタイミングだったな」

会話はそれ以上続かない。


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