ライム〜あの日の先へ


凛が入院することになったのは4人部屋だ。ほかのベッドはカーテンで仕切られていて、全て埋まっている。

適切な処置を受け、落ち着いた様子で眠る凛。
鈴子は点滴のつながれた小さな手にそっと触れた。

発作が起きるたびに苦しい思いをさせてしまう。もっと健康な体で産んであげたかった。

ーー妊娠中に飛行機に乗って日本に戻ってきたりして無理をしたのが悪かったのかな。
それとも、育てている環境のせいなのかな。力不足なのかな。

自己嫌悪しか起きない。


「望田さん」

その時。凛のベッドに白衣を着た医師が現れた。

「あ、二葉先生、お世話になります」

童顔で小柄な女医、凛の主治医である二葉(ふたば)だ。まだ研修医ではあるがとても熱心な先生だった。

「経過は順調です。明日は念の為にいくつか検査をさせてください」
「わかりました。よろしくお願いします」
「お母さんも少し休んでください。顔色、良くないです」

二葉がにっこりと鈴子に微笑みかける。指摘されて、ずっと体をこわばらせ緊張していたことに気づく。

「凜ちゃんは薬が良く効いていますから、大丈夫ですよ。お母さんの笑顔が凛ちゃんの一番の元気の源ですからムリは禁物です」

二葉の言葉が心に刺さる。

鈴子は今、凛のために生きている。凛の笑顔があればどこまででも頑張れる。

ーー凛を守るためにも、私は強く、そして笑顔でいなくちゃ。

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