ライム〜あの日の先へ

鈴子の選択

※※※


「まじか……」

一成は天井を仰ぐと、開口一番そうつぶやいた。

出張を早めに切り上げ病院に駆けつけた一成は、凛の入院と零次との再会という二つの衝撃に驚きを隠せなかった。


三人で暮らしているのは小児喘息に定評のある光英大学病院が近いことで選んだ賃貸物件だった。
五嶋商事の本社と五嶋家の屋敷からは遠く離れている。

それなのに、偶然とは恐ろしいものだ。

「それで、零次は気づいたのか?凛のこと」
「ううん。私が結婚して出産したって思ったみたい」
「なるほど。それにしてもあいつ、憧れてた一条の令嬢と結婚したのか。有言実行したってわけだ」

それは一成が予想していたいくつかの未来図の中で、最も悩ましい形だった。
だが、想定内だ。

< 131 / 231 >

この作品をシェア

pagetop