ライム〜あの日の先へ
福島をはじめとしたネクストゼロコンサルティングのスタッフは一成を置いて帰っていった。
五嶋商事の廊下に二人向かい合わせに立ったまま、重苦しい空気が流れる。

「聞きたいことがたくさんありすぎて、まとまらない」

いきなり目の前に一成がいる衝撃に、零次はそれしか言えなかった。

「私はコンサルとして今回のプロジェクトに参加することになりました。それだけです」
「それだけって……俺は一成がいるなんて聞いてない」
「私は御社を退職した人間ですし、もし、社長が不適任だとおっしゃるのでしたら担当を降ります」
「いや、そうじゃなくて……まぁ、とりあえず、食事に行こう。話がしたい」
「プロジェクトに関しては、御社の優秀なスタッフに確認して下さい。
私は夕食を作らなければならないので帰ります。
社長だって家族が家で待っているでしょう?仕事が終わったのなら早く帰ったほうがいいです」
「家族?なんのことだ?」

零次が首をかしげる。

「なんのことって…奥様とお子さんですよ」
「俺の?奥様とお子さん?そんなものいない」

いない?
一成は眉をひそめ確認するように尋ねた。

「一条琴羽さんと、ハルトくんですよ。隠すようなことじゃないですよね?」
「待て、どこからそんなこと……琴羽とは、ただの友人。
そもそも琴羽にはパートナーがいて、ハルトはその相手との子ども。俺の子どもじゃない」
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