ライム〜あの日の先へ
認めてしまえば零次に迷惑をかける。かろうじて保っている理性が鈴子にストップをかける。
唇をぎゅっと噛みしめ沈黙を続ける鈴子に、零次は今感じている思いを素直に優しく語りかけた。
「鈴子。俺、今、自分にすごく都合の良い幸せな妄想に囚われてる。
鈴子が俺の子供を産んで愛情込めて育ててくれた。
一成はこの子のことで俺に迷惑かけまいと五嶋商事を辞めて、コンサルとして見えないところから俺を支えてくれていた。
事実ならこんな幸せなことはない。夢でさえ想像できなかったくらい嬉しいことだ。
だから、言って?
この子は、俺の子だって」
そう言って鈴子を見た零次は笑っている。
鈴子には、凛を抱いた零次にフラッシュのような明かりが当たって輝いているようにみえた。
ーーライムライトだ。
前に零次が教えてくれた言葉が頭をよぎる。
零次にとって凛が自分の子供であるという事実は、輝きを放つほどの喜びなのだ。
零次の笑顔が鈴子の背中を押す。