ライム〜あの日の先へ

運命のイタズラ

「待って!水筒が車の中に落ちてた」

鈴子を引き止める声がする。
病院に着いて、凛を医師に預けたことでホッとしていた鈴子は、うっかり無防備に振り返った。


彼の差し出した女の子向けキャラクター柄の水筒を受け取ろうと、鈴子は手を出す。

「ありがとうございます」


「……?鈴子?」
「……!?」


ガチャンと鈍い音がして水筒が地面に落ちた。水筒はコロコロと転がって零次の靴に当たる。
名前を呼ばれたことで動揺した鈴子の手元が狂ったからだ。

あわてて水筒を拾おうとした鈴子の肩をつかみ、ぐっと顔をよせて零次はもう一度言った。


「鈴子なのか?」
「え…っと、あの……」

鈴子は動揺してとっさに言葉が出てこない。

「忘れたかい?五嶋零次だよ!
いやぁ、驚いたな。鈴子がまさか結婚してお母さんになっていたなんて。全然気づかなかった」


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