ライム〜あの日の先へ

「鈴子……?」

不意にクレアの母が思いもよらない行動をとった。
鈴子の顔をじっと見つめたのだ。それから胸につけた名札を見る。それからハッとなにかに気づいたように大きな声を上げた。

「もちだすずこ?あなた、望田鈴子?人殺しの娘の望田鈴子じゃない!!!!」

人殺しの娘。

そんな呼ばれ方をしたのは本当に久しぶりだった。
一瞬でかつての苦しみがフラッシュバックする。周囲に後ろ指をさされ、いじめられて暮らしていた日々の記憶が鈴子を苛んだ。

「このプリスクールは、人殺しの娘を先生にしているの!?ありえない!
信じられない。こんなところにうちの可愛い紅麗愛ちゃんを預けられないわ!」

ーーどういうこと?鈴子先生が人殺しの娘だって言ってるわ。
ーーみて!スマホで調べたら出てきたわよ。望田家事件って。会社社長のご主人を奥さんが刺して無理心中を図った事件みたい。奥さんだけが亡くなったって。
ーー嘘でしょ!知らなかった!!

お迎えに来ていたお母さんたちがざわついている。今はなんでもすぐに調べられる時代だ。

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