ライム〜あの日の先へ
あれから22年が経っている。
当時わずか2歳だった鈴子には、母のことも事件のことも何一つ記憶に残っていない。母の遺品も写真もない。

それでも、事件はずっと消えない。
鈴子につきまとっては、絶望の海へと落とす。


「クレアちゃんのお母様は、私のことご存知なんですか」

震える声で、それでも力を振り絞って鈴子が言った。

「私、小学校の同級生よ。今は山崎だけど、結婚前は村田。村田日菜。覚えてないかしら」

鈴子はクレアの母の顔をじっと見る。
小学校の運動会、徒競走で鈴子に負けろと理不尽なことを言ってきた同級生の面影が重なった。
< 198 / 231 >

この作品をシェア

pagetop