ライム〜あの日の先へ
「皆さん、子どもには最高の環境を与えたいわよねぇ?人殺しの娘なんて、子どもに悪い影響しかないわ。こんな人、早く辞めさせて!」

「やめて!!!」

周囲に知らしめようとして、これでもかと大声で鈴子をなじる日菜を止めたのは、なんと凛だった。

「なんなの、この子……もちだ、りん?もしかして、あなたの子ども?」

凛が鈴子を守るように、睨みを効かせながら日菜の前に立つ。
そんな凛の名札を見て鈴子の子どもだと知った日菜は、怒りに満ちた顔を凛に向けた。

「大人に対する態度がなってないわ。やっぱり人殺しの家系だもの、ろくな教育がされてないのね。
私たちは、大手商社五嶋商事に勤める主人の仕事の関係で先月までアメリカにいたの。紅麗愛ちゃんにはずっと専属のナニー(母親に代わって子育てをする保育のプロ)がついていてね。日本にはいいナニーがいなくて。ここのプリスクールは評判がよかったから預けたのに。
まさか、人殺しの娘がいるなんて冗談じゃないわ。幼児教育に求めるのは質よ。あなたの娘を見ていれば、質の低さがわかるわ。父親だってどんな相手やら」

人殺しの娘を連呼する日菜。
周囲のざわつきも一層大きくなる。

尋ねてもいないのに夫の勤務先を出して、鈴子と凛を見下したようにフンと鼻を鳴らした。日菜には夫が五嶋商事に勤めていることがよほど自慢なのだろう。
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