ライム〜あの日の先へ
「クレアちゃんはアメリカでナニーがついていたとのこと。乳幼児教育のプロフェッショナルが一対一でそばにいる素晴らしい環境だったんですね。
ですが、だからこそクレアちゃんは集団生活に慣れておらず、自己中心的な行動をしてしまうのかもしれません。
ここでは国籍や年齢の異なる子供同士で遊びながら、社会性を育むことができます。
人間関係を学び、協調性を身につけることも、『質の高い幼児教育』だと思います」

「……」

鈴子が繰り出す正論に日菜は口ごもる。
だが、鈴子に言い負かされることは彼女のプライドが許さなかった。

「…人殺しの娘のくせにえらそうにッ!」

結局、馬鹿の一つ覚えのセリフで日菜は鈴子を罵った。高圧的な態度を軟化させるどころか、怒りが抑えきれずに手まで振り上げる。

「ママをいじめるな!……ゴホッ」

凛も負けじと叫ぶ。だが、興奮して大声を上げたせいで、咳こんでしまう。


このままでは、また喘息の発作を起こしかねない。鈴子はあわてて凛の背中をさすった。


スクール長でさえなだめられなかった相手に、これ以上戦っていても凛の為にならない。

引くことも、また、大切なことだ。
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