ライム〜あの日の先へ
「危ないから、離して?」

「鈴子がいま何を考えているか、当ててみせよう。
ご両親の事件のことで俺に迷惑かけるかもしれない。だから、やっぱり離れよう」

「……!なんで?!」

「鈴子の考えそうなこと。そんなの気にするな。俺だって前社長の隠し子だって特大のスクープ抱えてる。
そんなことごちゃごちゃ言うやつはろくなやつじゃない。片っ端から戦ってやる。
俺は鈴子じゃなきゃダメだ。
昔の鈴子とは違う。一成もそう言ってた。りんちゃんのために強くなったんだな。ますます好きになった」

零次は、ずっと鈴子が欲しかった『好き』の二文字をあっさりと言葉にしてくれた。

でも。今の鈴子にはどうしてもあの日の先へ進む勇気が持てない。
凛だって、彼に懐いてはいるが本当に父親だと受け入れてくれるだろうか。
素直に結婚にハイと言えない。不安ばかりが鈴子を蝕んでいく。

「あと鈴子が心配しているのは、りんちゃんのことだね?
りんちゃんが俺をパパだと認めてくれるように何かきっかけを作りたいと思う。
俺にアイデアがあるんだ。それを一成と相談してみる。アイツは問題解決のプロだし、りんちゃんを一番近くで見守ってきたから強力な助っ人だ。
鈴子、これからは俺にも頼って。甘えていいから。二人であの日の先の未来へ進もう」

零次の左手はもう離さないと言わんばかりに、ぎゅっと鈴子の手を握っている。それだけで鈴子に安心が生まれる。

鈴子も自分の手にそっと力を入れた。
離さないで、と願いながら。


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