ライム〜あの日の先へ
第ニ章 ライムの果実

兄の親友

※※※

兄の一成(いっせい)と鈴子は7歳離れている。鈴子が小学校に上がったとき、兄は中学生だった。

そして彼は兄の友人だった。

彼の名は吉田零次(よしだ れいじ)。真面目で理論派の兄とは正反対、にぎやかで行動派の彼は、いつも鈴子の家に上がり込んでいた。


「一成、英語の課題終わった?」
「終わった」
「まじ?よかったぁ。俺、問5でつっかえててさ」


兄たちがリビングで宿題をしている。
二人の並んだ背中をちらちらと見ながら、鈴子は本を読んだりお昼寝したりして終わるのをおとなしく待つ。いつもの日課だ。

「鈴子、こっちは終わったから。今日は何を音読する?」
「昨日の続きがいいな、鈴子ちゃん。猫のてぶくろのお話」

兄と零次が振り返って鈴子に声をかけてくれる。
二人の目線が鈴子だけに向いている、その瞬間が何より好きだ。
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