ライム〜あの日の先へ
お迎えの時間は主に17時から18時の間。続々と保護者が現れる。
凛は皆にバイバイと手を振りながら鈴子の仕事が終わるのを待つ。保護者が早めに迎えに来てくれれば鈴子も早めに終わるのだが……

「ハルトくんのお迎えが、まだだね」

ハルトは0歳児のクラスの男の子だ。ほぼ毎日、お迎えが一番最後。だからいつも凛と一緒に待っている。

「ハルトくーん、これであそぼ」
「あい」

おかげでハルトは凛によくなついていた。
この日も、18時ぎりぎりにお迎えが来た。

「遅くなってすみません!」
「いえ、大丈夫ですよ。今日はおばあちゃんじゃなくて、ママなんですね」
「義母に急用ができまして……すみませんでした」

やってきたのはハルトの母だ。ハルトのお迎えはおばあちゃんが多い。お母さんを見たのは久しぶりだった。

「リンちゃん、いつもハルトの相手をしてくれてありがとう」
「えへへ。ハルトくん、だいすきだから。きょうもいっぱいあそべてたのしかったよ」

オシャレにスーツを着こなしたハルトの母。仕事をバリバリこなしている姿が目に浮かぶ。逆に子供を抱く姿に違和感があるくらいだ。

「ハルトくんバイバイ、see you tomorrow」
「ふぎゃー!」

凛がバイバイと手を振ると、ハルトは大声で泣き出した。母の腕から飛び出さんと言わんばかりに体をよじり、凛の方へと腕を伸ばしている。

「ハルト、帰るよ。今日はパパが早く帰ってくるから一緒にご飯食べよ。
先生、リンちゃん、さようなら」

泣き叫ぶハルトをなだめすかしながら、母は急ぎ足で帰っていった。

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