ライム〜あの日の先へ
目を開ける。
カーテンのかかった部屋の中は薄暗い。
その薄暗さの中で鈴子は違和感を感じていた。
ーーここは……。
頭がぼんやりとしていて、夢か現実か定かではないような気がする。
肩にフッと風があたり、ハッと我にかえった。
ーーこれは、現実。私、服、着てない。
しかも、お腹のあたりに腕がある。ぎゅっと抱きしめられるようにして眠っていた。
ーー振り返ったら、消えてしまう夢じゃないよね?
後ろにいるのは、零次くんだよね?
「どうした、鈴子、まだ寝てて大丈夫だよ?」
もぞもぞと動いたことで起きたことがわかったのだろう。聞こえた声は間違いなく零次の声だった。
そっと目を開くと、そこに、まるでスポットライトが当たっているかのように輝くような笑顔を見せる零次がいた。
「あ、うん、でも……」
「体、痛い?」
「それは大丈夫。……気を使わせて、ごめん」
「あんな大胆な告白してきたし、付き合ってるカレシもいたみたいだから、びっくりしたけど。
俺でよかったのか?鈴子の初めての相手」
今まで付き合ってきたカレシとは、どうしてもする気になれなかった。自分を大事にしすぎているなんて言われてふられたこともあった。
今思えば、心がついてこなかったのだと思う。体を重ねて、全てさらけ出してもいいと思えるほど相手に心を開けなかった。
「大好きだから。
モテる零次くんにはつまらなかったでしょ。上手く出来なかったし。ごめん。もし、いやだったら、はっきり言ってね。そうしたら、一週間なんて言わずに今すぐ…」
今すぐ帰るねと言いかけた鈴子の頭を片手で抱えると、零次はおでこに唇を寄せた。