社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
そのポットを手にしたまま、資料を返しに総務に向かっていた千景は、早蕨に廊下で出くわした。
「嵐山さん、待ってるわよ」
と笑って言ってくる。
はい、と千景は苦笑いしたあとで、
「はい」
と透明ポットを差し出した。
「早蕨さんもおひとつどうぞ」
「あら、ありがとう」
と早蕨は甘辛ダレのついたイカをとって去っていった。
編纂室解散後、千景は秘書に行くことが決まっていた。