社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「すみませんが、仕事中ですので。
 二度とこんな風に、つきまとわないでください。
 迷惑です。

 社長に言いつけますよ」
と言うと、しゅんとしていた。

 これでしばらくは静かかな、と思ったが。

 そのまま歩いていると、真実は、しゅんとしながらも少し離れてついてくる。

 反省しながら、ついては来るのか、と思っているうちに、また横断歩道に差しかかる。

 おっと、赤になるな。

 信号が点滅しはじめたので、急ぎ足で渡った。

 上手く渡りきったが、ちょっと気になり、振り返る。

 怒られたので、距離をとってついて来ていた真実は向こう側に取り残されていた。

 引き離すチャンスだな、と八十島は思った。



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