たとえ、この恋が罪だとしても
「すげー……、すげー話だよな……なっ、紗加」
「ええ、おめでとう。瀧人」
 
 紗加はすっと立ち上がり、おれの横に立った。
 そして肩に手を置き、腰を屈めて耳元でささやく。
 
「さすが、わたしが見込んだだけあるわね。ただのグラビア撮りで終わらせる気ははじめからなかった」

「みんな、紗加のおかげだよ」

 紅色に染まった爪先がおれの頬をすべり、そのまま唇をなぞってくる。
 とたんにしびれるような感覚に襲われる。

「今夜はお祝いね。家に来てちょうだい。ゆっくり対策を練りましょう。とっておきのシャンペンもあるから」
「って、旦那は?」
「今日から出張よ。海外だから二週間は帰ってこないわ。タイミングがいいことに、ね」

 紗加は言った。瞳の奥に媚の色をまとわせて。

 
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