たとえ、この恋が罪だとしても
第12章 別れのとき
「お疲れ」と安西さんは握手を求めてきた。
「お疲れ様でした……」

 そう言って、手を伸ばしたとたん、操り人形の糸がぷっつりと切れたように、足に力が入らなくなった。

「文乃ちゃん!」
 安西さんはふらついたわたしをとっさに支えた。

「だ、いじょうぶです。少し目眩がして」
「控室で休もう」
 彼はわたしの肩を抱いて、建物に向かった。

「これ、飲むといい」
 手渡されたのは温かい缶コーヒー。
 少し甘めのミルク味が疲れた身体に染み渡っていった。

「無理させて悪かった」
「もう大丈夫です。ご心配かけてすみませんでした」

  まだ少しふらついていたけれど、安西さんを安心させようと笑みを作って答えた。
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