たとえ、この恋が罪だとしても
「撮影は? わたし、ちゃんとできましたか?」

 安西さんはこれ以上ないほどうれしそうな顔で頷いた。
「ああ。きみをモデルに選んで正解だった。大満足! 最高だった!」

「よかった……」
  心の底からほっとした。役に立てたことが何よりも嬉しい。


「さっき紹介した酒井さん、アート・ディレクターの。彼も文乃ちゃんのこと、すごく気に入ったみたいでさ。休憩中におれのところに来て、CMに使いたいからプロフィール教えろって、もううるさいのなんの――」

 さっきのあの人の態度を思いだして少し嫌な気分になった。

 わずかに顔もしかめてしまった。

「心配しなくても、何も教えてないよ。個人情報だって言って突っぱねた」

 安西さんはわたしのほうに手をのばした。
 その手につかまって椅子からゆっくり立ちあがった。

「もう歩ける? 疲れただろう? 着替えておいで。そのあと車で送るよ。ここにいたら打ち上げに連れていかれることになるし」
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