たとえ、この恋が罪だとしても
 そんなわたしを見て、安西さんは嬉しそうに言った。
「やっと、笑ってくれたね。その顔が見たかったんだよ」

 そう言うと、今度はこれ以上ないほど真剣な表情に変わった。

「会いたかったよ。文乃がどう思ってるかわからないけど、おれは今でも文乃が好きだ。その気持ちは少しも変わっていない」

 もう、我慢できなかった。
 堰を切ったように涙が頬を伝っていく。

 店はほぼ満員だし、店員さんも近くにきそうだし、こんなところで泣いたらおかしいと、自分をいさめるのだけど、どうしても止まりそうになかった。

「ご、ごめんなさ……い、お、おかしいですよね……こんなところで」

 安西さんは優しい眼差しでわたしを見つめながら、ハンカチを差し出した。

 そして、「出ようか」と言った。
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