排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
莉愛をかけての勝負


 *


 30分後、莉愛は里花と美奈に化粧を施され、体育館の舞台袖に隠れていた。

 何この、人の多さ……ギャラリーの数がやばいことになってるんですけど。

 体育館をぐるりと埋め尽くすギャラリーに、莉愛は心の中で悲鳴を上げた。

 二階にまで人が……。

 ザワザワと体育館に、集まった人々の声が舞台袖まで聞こえてくる。

「狼栄のエースと群馬国際大学のエースが、三年の女子を賭けて勝負するんだって」

「へー、そんな可愛い子が三年にいたっけ?」

「んー?どっちかって言うと、男っぽい感じだったぜ」

「そんな人でもモテるんだ?」


 ひーっ……。

 モテません。

 モテませんよ。

 私は男子より、女子に告白される方が多いいです。

 莉愛の背中に嫌な汗がにじんだ。
 
 
 顔面蒼白で莉愛が頭を抱え座っていると、理花と美奈が楽しそうにやって来た。


「じゃあ莉愛、手筈通りにお願いね」

「…………」

「莉愛ってば、聞いてる?」

「……私、出て行かないとダメ?」

「当たり前じゃない。莉愛を賭けての勝負なんだよ。本人が出てこなかったらダメでしょう」

 それは……そうなのかな?

 莉愛はそっと、舞台袖からコートを見ると、大地と島谷さんがアップしているのが見えた。

 大地……。

「それにしても、莉愛は何をそんなに心配しているの?」

「こんなに盛り上がってるところに、男女みたいな私が出て行ったら、盛り下がっちゃうよ」

「そんなこと?莉愛は私達のメイクテクやヘアーアレンジの腕を信じていないの?」

「それは……信じてるよ。でも、美人が登場すると思っている人達をがっかりさせちゃうよ」

 理花と美奈が、笑いながら顔を見合わせた。






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