道づれ愛




 初めて会った佑香のご両親は長身で細身の父親と、小柄でふっくらとした母親で佑香の顔立ちは父親似だなと思った。佑香と真面目に付き合っていることを話し、今日泊まりで出かける事を承諾して頂けるかと伺う。

「佑香から今日のことは聞いています。桐生さんとお付き合いしていることも。佑香も大人ですから、こうして私たちに挨拶に来て下さって断るような理由はありません」

 佑香の父親は淡々と、不機嫌ではなく佑香に似た抑揚の少ない話し方でおっしゃった。

「毎週お迎えに来て下さっていたのには随分前に気づいていましたから」

 母親の美香に似たトーンの言葉に頭を下げた。

「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「ごめんなさい、そんなつもりではなかったのよ」

 こうして快く送り出してもらい車で二人になると早速聞いた。

「昨日、何があった?」
「なんかね、仕事の帰りに院生に告白?かな…された」
「はっ?誰?佑香の知ってる奴?」
「名前と顔は知ってる」
「何て答えた?」
「お付き合いしている方がいますので申し訳ありません、と」
「よくあるのか?」
「うーん、最近なかったから久しぶり。大丈夫だよ、同じ事務所の方たちに報告することになってるの」
「どういうこと?」
「○○さんから告白されて断ったと報告するの」
「どうして?」
「大学内の人には待ち伏せとかされやすいでしょ?帰宅時間がはっきりわかっているし、調べようと思えば自宅とかわかるってことじゃないかな?私は知らないけど、以前そういうトラブルがあったみたい」
「すごく大したことじゃないか…来週は行ける時は迎えに行くよ」

 そうか…25歳の佑香は美しいだけでなく、年齢的にも大学生や院生、助教授や教授…誰から狙われてもおかしくないじゃないか。事務所の決まった人たちと決まった場所で働いていると聞いて安心していたが迂闊だった。来週は分かりやすく迎えに行こう。
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