道づれ愛
quattro



 佑香に毎晩電話をするのが帰宅前の会社の部屋からという日もあるほど、ライブ配信の後は忙しかった。

「やっと明日会えるな。平日は食事にも誘えなかった」
‘お疲れ様、尊さん。お仕事落ち着きそう?’
「何とか問題なし。こんなに短期間に増産だの、いろいろな決定事項の多いのは初めてだったよ。佑香の協力のおかげで嬉しい悲鳴だ」
‘私は何も…’
「いや、本当に。ネット注文が急増したのは平均身長の佑香が着てくれたから」
‘ふふっ、うまく紹介して下さったのは兵藤社長で私はマネキンみたいだったけど’
「彼にも感謝してるよ。兵藤玲央の効果もすごい。あの日彼の着たものは、元々レディース商品の半数なんだが全て完売だ」
‘すごい’
「ああ、昨日お礼のメールをしたら彼は今、モデルとしてのオファーを断るのに毎日忙しいって返信があったよ」
‘それはそれで忙しそうだね’
「そうだな。でも彼は絶対に復帰する気はなさそうだ。経営者気質なんだろうな。自分へのオファーをただ断るだけじゃなく、代わりにこの子どうですか?お願いしますと連れて歩いてるみたいだ」
‘写真じゃなく連れて行く…なるほど、モデルとしてイメージわくよね’
「地道に社長業されているんだよな、見た目はあんなに華やかな人だが…佑香は今日は変わりなかった?」
‘うーん、変わりないかな…’
「何があった?」
‘明日覚えてたら言うよ、大したことじゃないし。明日何時に出る予定かな?’
「佑香、大したことじゃないかどうかは聞いて決める。明日10時に迎えに行くよ。泊まりだからご両親に挨拶したいんだけどおられるかな?」
‘私が話して大丈夫だったよ’
「それはダメ」
‘ありがとう、二人ともいると思う’
「じゃあ、明日な。おやすみ、佑香」
‘尊さん、おやすみなさい’

 佑香のおやすみなさいを聞くと寝つきがいいんだ。やっと明日会える。
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