道づれ愛
cinque
クリスマスは平日だった。もう大学にはあまり人はいないらしいが佑香を大学前まで車で迎えに行く。
「お疲れ様、佑香」
「ありがとう。尊さんもお疲れ様でした」
そう言い、慣れた様子でシートベルトをした佑香が
「お花の香り?」
と不思議そうに俺に聞く。俺は身を乗り出し後部座席の花束を佑香に渡すと
「こんなところで悪いが、改めて…佑香、俺と結婚して下さい」
と彼女を見つめた。佑香は満面の笑みを浮かべ答える。
「はい、尊さん。お願いします」
「よし、行こう」
「食事じゃないの?」
「うん?今プロポーズ、こんなところになったのは今から指輪を買いに行くから」
「指輪…」
「そう、佑香に送る指輪。一度見に行ったんだけど…佑香の好きなものを一緒に選ぼうと思ってな」
そして先日一人で行ったジュエリーショップ‘Diamante Kai’本店へ二人で行く。彼女に婚約指輪を贈りたいと店員に伝え
「佑香はどんな感じのがいいか指さしていって。何個でも」
「何個でも?」
「そう。そこから一緒に選ぶから自分がいいなと思うものを何個でも。俺の希望は毎日つけてくれること」
「素敵なご希望ですね。ごゆっくりご覧下さいませ」
俺と店員に静かに見守られながら、佑香は遠慮がちにショーケースを覗いた。