青春の備忘録
 女子生徒がただ面白がって(はや)しているのか、それとも颯は本当にそのつもりなのだろうか。
 いや、でも私はかなり前ではあるけれども、あの『勝手に彼女事件』が発覚した時に多少キツく言ったし、彼だって今の状況を見て少しは分かっているはずだ。
 私はここで振り返ると確実に面倒ごとに巻き込まれると分かって、またあえて聞かないふりをした。
 ここでも、友人たちと東京の夜景を眺め、夜風にあたって、ただ何も考えない一夜を過ごしたのであった。
 いいんだ、今は。
 せっかくの修学旅行なんだから、勉強のことも、日々のことも、このよく分からないしがらんだ関係も、一旦全部忘れてしまえばいいんだ。
 そう思っていた。
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