手を伸ばした先にいるのは誰ですか





「その‘心’の場所が私を答えに導いてくれた」

話している言葉は日本語だが、美鳥の話す順序は外国人っぽいところがある。友人も外国人が多いし、ディベートを小学生の時から授業で行い、プレゼンも外国人に教わればそうなるのも自然なことだ。

「愛は‘心’が真ん中にあるのよ」

そう言いながら美鳥は‘愛’と俺の胸に指先で書く。

「心が真ん中にあるから何も考えないで動く…家族愛とか無償の愛とかね。朱鷺と私は最初からそれなのよ…愛…最初からそれで最後まで変わらないと思う」
「だから結婚する」

枕から頭を上げてチュッと美鳥の鼻先にキスすると、彼女も同じようなキスをする。そして俺の口に人差し指を当てると

「しーっ…朱鷺」

俺が愛してやまない魅惑的な微笑みを見せる。

「最後まで聞くのが紳士よ?」
「…sorry to bother you」(邪魔してごめん)
「ふふっ…でね、朱鷺の言う結婚って恋愛して結婚するんじゃない?‘恋’という漢字は‘心’が土台になって揺れ動いたりひび割れたりするものだと考えたの。それが揺るぎないものになったときに‘心’が真ん中にきて‘愛’になる。その‘愛’は私と朱鷺の間にある‘愛’とは違うのよ」
「つまり…恋を経ての愛から結婚だと思うのか?」
「そう。私は恋を知らないけど…」
「俺と美鳥は愛し合っているが家族愛のようなものだと言いたいんだな?」
「そう。言いたいんじゃなくて言ったの…私の結論よ…だから結婚は違うと思う。朱鷺は朱鷺にふさわしい女性と…」
「そんな顔で言われても説得力がないな、美鳥」

俺は両手で美鳥の頬をすっぽりと包む。

「俺は美鳥しか愛さない」
< 11 / 268 >

この作品をシェア

pagetop