手を伸ばした先にいるのは誰ですか





私の頭を自分に引き寄せた龍は自分の頭をこちらへ倒して軽く乗せると、ゆっくり言葉を発した。

「Plain living and 「high thinking.」」
「ははっ、美鳥とハモった。俺の好きな言葉のひとつだ」
「私も好き。日本では、質素に暮らし自分の頭で考えるって訳されてるみたいだね」
「そうだな。あー俺このあと美鳥の言うことが分かる気がする。質素の部分?」
「わっ…やだ…」
「嫌なの?面白いほど分かるけど?」
「参りました」
「でもはしょらず聞かせてよ。ハモりながら話そうよ」
「ふふっ…high thinkingの部分は‘自分の頭で考える’でいいと思う。好きな部分」
「うん、同じく」
「plainを質素って訳すのも合ってるけどこの‘Plain living and high thinking.’の場合はplainを‘明白な、わかりやすい’と私は向こうにいる間は思っていたから」
「日本訳に違和感があるんだね?」
「そう」
「二人とも好きな、high thinkingは一緒にやっていこうよ」
「まずは…どのカフェに行くか考える?ふふっ」
「大事なことだ。中じゃなく、海の見えるテラス席は絶対だろ?」
「うんっ」

龍に解放された頭を大きく縦に振ると、まだ重なるような位置にあった彼の顔に頭づきしてしまった。

「っ…ってっ…」
「ごめん、ごめんっ…ごめんなさいっ。血でた?」

自分の頭への衝撃で驚き、顔ならもっと衝撃だよね…と、痛そうに口元を押さえる彼を覗き込んで慌てて謝る。チュッ…

「マシになった、もう一度で治るかも」

チュッ…二度、軽く唇を重ねてから龍は

「美鳥、好きだよ。とても愛くるしい表情と仕草が大好きだ。たくさん話してくれるこの唇も魅力的」

そう言い、さらにもう一度触れるだけのキスをした。
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