手を伸ばした先にいるのは誰ですか





とても楽しいけど、心臓と頭が忙しい一日だった。夕方の海沿いで、周りの人たちは薄手のコートを羽織っているのに私はコートがいらないくらい、心身の活性化がすごくて…キスからさっきここへ送ってもらうまでの数時間は、自分の心臓のポンピングに‘好き’という言葉が押し出されそうで…でも喉元まで‘好き’が押し出されてくると、朱鷺の顔が思い浮かんで…コックン…好きを飲み込んだ。

これはダメだと思う…朱鷺には関係の解消を受け入れてもらい、直後に龍が好き?さらに朱鷺を思い出す?私の‘心’はどこにあるの?

high thinkingは重要だけど、今日はもう無理だ。

泡風呂の泡を意味もなく混ぜながら、月曜日の明日は仕事が休みなことにホッとする。

少し頭を整理したいと思う私と、いちいち分かりやすくplainにしていては、恋愛なんて無理よと思う私がいる。それぐらい思うほどには見聞きしている、友人たちの恋愛模様を。

「またすぐ誘うよ、デートに。今日は美鳥をちゃんと好きになれて良かった。一日ありがとう、美鳥」

龍は今日の最後にそう言った。

「私も楽しい一日だったよ、ありがとう…ちゃんと…応えられず…ごめんなさい」
「大丈夫。心が動いている、それだけで今日は十分。美鳥の言葉も好きだけど表情も好きだから、その表情が語ってくれるのもいいものだよ」

私も龍の言葉が好きだけど…ふーっ…とりあえずお風呂から上がろう。やっぱり今日は無理よ。
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