手を伸ばした先にいるのは誰ですか




朱鷺は永遠の愛を言葉にしたあと、再び私を抱き上げ寝室のアンティーク風の猫脚ドレッサーの前に座らせた。

「シャワーしてくる…待てる?」
「…待てるよ」
「やっぱり連れて行こうか?」
「待てるって」
「じゃあ髪…これでよろしく、美鳥」

朱鷺は1本のヘアオイルを取り出してドレッサーに置くと私の顎をしなやかに長い指で持ち上げ唇を重ねる。ぐいっと上を向くことで僅かに開いていた唇を彼の舌は容易に割るとすぐに私の舌を絡め取った。

肉と肉が交じり合う感覚に全身が熱を帯びる。人間の体のたった7センチほどの器官を舐め合い、吸い合い、甘く食む…健康管理で舌の先は心臓や肺、舌の中心は胃や消化器系、舌の根元は腎臓系、舌の側面は肝臓や胆嚢などの状態を表すというから内臓に直結して感じるのは当たり前か…ふぅ…っん…

「…と…きっ…」
「ん?」
「早く…戻って…」
「美鳥の顔が…このエロチックな間に戻る」
「っ…言い方っ…」
「悩殺的」
「…セクシー?」
「フェロモン全開」
「……妖艶?」
「淫靡」
「………今から1分で寝てやる…」
「拗ねても可愛いよな…いつも…たまらないね、美鳥」

朱鷺は私の上唇を捲るようにペロリと舐めると上機嫌でバスルームへ向かった。
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