手を伸ばした先にいるのは誰ですか





「亨さんのところは昔‘分家’という言い方があった系列だが蜷川は蜷川だ。‘蜷川’として2人でパーティーに出てくれ。茶会の方が先にあるから出来れば茶会へ」
「うん」
「絶対に‘ご当主は?’‘お兄さんは?’とか聞かれるから、一緒に育ったが兄妹ではないと言うだろ?そしたら翌日には主要なところには話が回っている。その日は西田をつけるから美鳥が答える必要はない」
「どうして西田さん?」
「亨さんより西田の方が‘蜷川’と周りから顔を覚えられている。話が早い」
「なるほど…って…朱鷺…私…今、好きだって言ったばかりなのにもうシナリオを考えたの?」
「美鳥を守る方法はいつでもシミュレーションしてる」
「すごい…」
「これも愛し方…俺の美鳥への愛は甘やかすことも、ベッドで蕩けさせることも、こうして外へ対処して守ることも、当たり前。美鳥は俺だけ見て俺に引っ付いているだけでいい」
「こうして?」

私が朱鷺の首に腕を回してぎゅっとしがみつくと、彼はさらに私の腰を引き寄せた。

「そうだ。それでも…こうしながらも仕事は好きにすればいいし、仕事だけでなくヨーロッパ中の友達に会いに行ってもいい。美鳥は自由だ。結婚はするが、今でも10年後でもかまわない。俺たちのタイミングでいいからな。とにかく俺たちが兄妹ではないと世間に知らせてから手を繋いで外を歩こうな」
「うん。ありがとう、朱鷺」
「いくら策を練ろうが暇な奴ほどいらない噂話はするから、必ず何かしらは耳に入るが抱え込むなよ?何でも俺に言え」
「ふふっ…私、抱え込めないよね?朱鷺がさっきみたいに‘吐け’ってこわーい顔して言うんだもの」
「そう言われる前に言えよ」
「善処します」
「ポジティブなようで後ろ向きの言葉だ」
「ワタシニホンゴワカリマセン」
「ははっ…I promise to love you forever and ever.」
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