手を伸ばした先にいるのは誰ですか





「ははっ…びみ?」
「いろいろ使ってみないと言語能力は落ちますからね。私はもともと日本語のword数が少ないので日々brushing upです。そうでないと一生‘おいしい’しか言えない。おかしい時は教えて下さい」
「了解、遠慮なく指摘する」

美鳥はそう言うが、日本語のword数はともかく彼女の知識の幅広さと知性は今日会うまでの数回の電話でもとても感じることが出来た。とにかく話していて飽きることがない。先ほどのラルドもそうだが、食に関することから株式まで知っていると思えば、ジブリとディズニーを熟知している。

「今日はラプンツェルじゃないね」

緩く髪をアップにした美鳥に言うと

「今朝、少し時間がなくて下ろしたままとも思ったけど…ヘビメタコンサート中のような髪だったからくるくるって終わらせました」
「ふっ…ヘビメタコンサート終了?」
「はい、closeで問題なし」
「寝坊したの?」
「いえ、電話で話し過ぎちゃって」
「朝から?」
「はい、イギリスとなので」
「なるほど…向こうは寝る前でこちらは寝起きで話すんだね、ヘビメタコンサート中のような髪で…くっくっ」
「ヘッドバンギングし過ぎて髪一本一本にairを含み過ぎた髪ってことです」

少し言葉を探す様子を見せながらとても真面目に教えてくれるところは、その仕草も言葉も愛くるしい。
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