手を伸ばした先にいるのは誰ですか
「Buono!これ大好きですっ」
美鳥が日本語探索を忘れてイタリア語で感嘆するカペレッティはイタリア語で‘小さな帽子’という意味で、この手打ちパスタの中にはじゃがいもが入っており、豚のサルシッチャとキノコのソースがかかっている。
「それは良かった」
「このサルシッチャもいいですよね?さりげなくpork、pork…もしかしてリクエストして頂いたんですか?」
「好きだとは伝えたけどどこまでかな?」
「これがメインでもいいなぁ…ワインも美味しい」
トスカーナ産の日本ではここでしか味わえないシャルドネを美味しそうに飲む彼女は
「私の知っているカペレッティは中にチーズが入っていてそれがソースになるようなシンプルなものだったけど…これ大好きです」
と言い、皿とグラスを下げに来た担当ソムリエに
「アラカルトでこれ一皿って出されていますか?」
と聞いている。やってないと言われ残念そうにしながらも
「それくらい美味しかったと、作って下さったcapocuocoかcapocuocaへお伝え下さい」
「ありがとうございます、伝えさせていただきます。当店はcapocuocoでございます」
「ワインもとても美味しいです。メインもワインとともに楽しみです」
とシェフだけでなくソムリエを誉めることも忘れない。その堂々とした振る舞いに
「蜷川令嬢がヨーロッパにいれば社交界へのお誘いがあったんじゃない?」
と聞いてみる。
「あったみたいです。16歳から19歳までは毎年打診されていたようですね」
「デビュタント?」
「ええ、デビュタントしてませんけど。私がパーティーは苦手なことを父が理解してくれているので免れました」