王女の選択
こんなことは考えたくないが、もしカーラに何かがあったらジェラルドは立ち直れないかもしれない。そしてその姿を見て、ヴィクトーもまた罪の意識に苛まれてしまうのであろう。
ヴィクトーにできることは、神がカーラを見捨てないでいるよう祈ることぐらいだった。
朝日が射し、窓の外が輝きだしたころ、ヴィクトーは目覚めた。
急いで支度をして大広間に降りると、リュカがちょうど椅子に腰かけたところだった。
少し青ざめた顔のリュカが気になり、リュカの肩を軽く叩く。
「眠れたか?」
「眠った・・・とは思う。目をつぶっていたからね。ただ気分は最悪だけど」
「食事の後、ジェラルド殿のお部屋に行こう。ついてくるか?」
「ああ。正直行きたいような行きたくないような不思議な気分だけど」
リュカは肩を竦めると、温めたポリッジを口にした。
食事が終わるとすぐに二人はジェラルドの部屋へと足を向けた。
ノックをしたが何の返答もないため、ヴィクトーはゆっくりとドアを開けた。
そこには昨日と全く同じ姿勢でカーラの頭に触れて見守るジェラルドと、うつ伏せに寝かされたカーラの姿があった。
「ジェラルド・・・」
リュカが声をかけると、ゆっくりと振り返ったその顔は苦痛で歪んでいた。