こんなのアイ?
「ふーん…」
彼らの言葉と共に、ブレントとのこと、悠衣とのこと…は抱かれたとは言わないけど熱の時に来てくれたことは話すと、克実はふーんと黙ってしまった。そのまま食器を運び始めた彼に続き、私も一緒に片付け始める。克実が無言で食洗機に食器を入れ、私も黙って作り置きのしぐれ煮を冷蔵庫へ、さっと湯がいた小松菜を冷凍庫へ入れ、ご飯も冷凍するため小分けにする。
「愛実は…悠衣が好きなのか?」
「…まだわからないけど…安心できる人で、信じてみたい相手だね」
「似たようなことを聞いたことがあるが?」
目を合わさず食後の珈琲の準備をしながら鋭い質問をする克実の横顔を見つめる。
「そうだね…あったね…ふふっ、そう言われると…もう何とも返事も言い返すことも出来ないね」
ご飯を冷凍庫へ入れ
「よし、じゃあしっかり食べてね。今日はこれで帰るよ」
「…珈琲は?」
「今日はいいや、ごめんね」
「送る」
「いいよ。まだ7時台だし、ありがとう。ゆっくり休んで」
様子を窺うような克実の視線は無視しコートとバッグを手に部屋を出る。きゅっと身の縮む寒さに頭が切り替えられそうな気がしてコートを手に持ったまま駅までの道を歩く。
‘今度は安心してね、優しい人よ’‘もう一度信じて、大丈夫だから’
二度目の結婚前に心配する両親と克実に言ったな。今日も結婚なんて話ではないことはわかっていても、克実は私が傷つくのを心配し当然いい顔はしない。二度も彼らに心配をかけたんだから当然だね。二度あることは三度あるってか…私の人生こんなもんだ…ふふっ…これ以上はないんだ…寒いっ
骨まで冷えたのを感じ慌てて立ち止まるとコートを着る。そこで、プッ…道路の反対側からクラクションが聞こえ
「愛実、あっち渡って来い」
悠衣が運転席から少し大きな声で横断歩道を指さした。