こんなのアイ?





「ああ…北川さん」

 そう答えた悠衣は北川さんという女性と、本年もよろしくと新年の挨拶を交わしている。

「皆藤社長はお買い物ですか?可愛らしい方と…あ、こんにちは」

 私に気づいた風に挨拶されたが私は知らない人だ。とりあえず無難に答える。

「こんにちは」
「あなた…昨夜は違う男性と一緒で今日は皆藤社長と?お盛んね…うふふ」

 お盛んって…

「皆藤社長、明日うちの両親と会われますよね?私も同席させて頂いてもよろしいかしら?ここで会えて良かったです。連絡させて頂こうかと思っていたので」
「ご一緒にどうぞ」
「ありがとうございます。…社長騙されちゃダメですよ。可愛らしいお嬢さんだけど毎晩何やってるんだか…クスッ…では明日」

 悠衣の肩に手を置き彼の耳元で、しかし私に聞こえるように言った彼女はにっこり笑い店をあとにした。昨日以前にどこで会ったんだろ?昨日の時点で私を知ってたよね…

「愛実、北川さんと知り合い?」
「ううん…今初めて名前を知ったの」
「でも昨夜男といる時に会った…ってことか」

 男といるって…さっきの彼女の言ったこと疑われてる?

「昨日ブレントと、」
「ブレント?連絡取ってたのか…」

 ブレントと克実と…って言う前に聞かれ、悠衣が口調や態度は全く変わりなく見えるが頭では私のことを疑っていると感じる。いつもの彼なら話を聞いてくれるもの…相手がブレントだから余計疑われてるのかもしれない。疑うのも嫌よね…疑い続けてきたから良くわかる。結局…全面的に信頼できる相手っていないんだね…そう思うとやっぱりお一人様で克実とお二人様が精神衛生上、一番いいと思われる。今なら戻れる。
< 130 / 196 >

この作品をシェア

pagetop