こんなのアイ?





 翌日の5日、悠衣が昼過ぎにお土産を手に迎えに来てくれた。年末から昨日まで彼は旧正月の暦を使う香港と中国に出張に行っていた。それらの地域では1月1日は休日だがあとは通常の働き方をしているらしい。

 彼は買い物に行こうと言うと‘Diamante Kai’の店舗が入っていない百貨店へ向かった。

「私、ここ初めて来た」
「いつも決まったところか?」
「こだわりはないけど、カードがあるからあそこに行くって感じ…ふふっ」
「服は?ブランド決めてる?」
「よく行く店はあるけどね、決めてはないよ」
「ん、なら俺が行くところで愛実のも見よう。シンプルで愛実の好みに合うと思う」
「私のは今いらないよ。買い物にはいくらでも付き合う」
「はいはい」

 彼は私を宥めるように頭をポンポンとすると手を繋ぎ高級ブランド店へ足を踏み入れた。あー足下絨毯の高級ブランド店…いくらでも付き合うって言ったのと勝手が違うな。メンズレディースとも洋服から靴や小物まで揃うようだ。

「皆藤様」

 黒いスーツ姿の男女の店員が次々に悠衣に挨拶したあと彼は

「自分たちで見せてもらっても?」

 と店員に付かないでいいと断りをいれる。

「愛実?どうした?」
「悠衣って皆藤さんて言うんだったか…って思って」
「ぷっ…面白いな、中埜さん」

 彼が私の鼻を人差し指でツンツンっとした時

「皆藤社長」

 と声がかかり、振り向くとバーの前で見かけた長身の女性がいた。
< 129 / 196 >

この作品をシェア

pagetop