こんなのアイ?




 4月1日の入社式から数日は愛実を迎えに行くことが出来なかった。克実が行くと言っていたからではなく仕事がどうしても抜けられない。遅くとも定時30分後に事務所を出る愛実に時間を見計らい電話する。

‘悠衣?’
「仕事、終わったか?」
‘うん、今克実の車に乗ったところ…昨日と全く同じやり取りだ…’
‘愛実スピーカーにして’

 克実の声がしたと思うと

‘皆藤さん’
「はい」
‘毎日確認されなくても大丈夫ですのでお仕事続けて下さい’
「確認もですが愛実と…愛実さんと話したいのでお気遣いなく」
‘…愛実でいいですよ、皆藤さん’
「愛実、今日どっちに帰るんだ?」
‘克実のところ。ご飯作ってくれたんだって’
「そうか…あとで会える?」
‘皆藤さん…よく俺の前で誘えますね’
「どこだって誘いますよ。愛実不足ですから…愛実、帰ったら連絡する。うちに来て」
‘しかも自宅に誘うんですか…’
「愛実、あとで」

 愛実に電話したのに克実ばっかりが話するじゃないか。毎日会っていたのに、いま毎日会えないから、こっちは愛実不足なんだ。電車に乗らないのは安心できるが、俺と愛実の邪魔はしないでくれ。
< 148 / 196 >

この作品をシェア

pagetop