こんなのアイ?




‘タルトも、悠衣とのデートの時間も…どっちも贅沢’か…腕を伸ばし小さなテーブルを挟んで座る愛実の頭を大きく撫でる。そんな言葉が愛実の口から自然に出てくるのは嬉しいが、無意識に煽られているようだ。そんな俺の気持ちに気づかず

「ちょっとっ…ぐしゃぐしゃにしないで」

 と可愛い愛実はほんの少し頬を膨らませ手で髪を整えている。だが、今度はその顔に急に満面の笑みを浮かべ小さく、きたきたっ…と言う。店員に聞こえない声だが絶対に顔でバレてる。くそっ、この可愛い顔を見んなよ。オーダーの時の女じゃなく若い男が運んできたのかよ。

「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」

 店員に笑顔で返事する口を塞ぎたくなる。

「どっちから食べようかなぁ?迷うな…悠衣はどっちからにする?」
「愛実」
「…?」
「愛実が食いたい」
「…只今そういう発言は受け付けておりません」
「いつ受け付け開始?」
「お問い合わせもダメ…ねぇ食べていい?」
「くっくっ…どうぞ。一口ずつもらう」

 俺にまず一口ずつくれたあと、ゆっくりと味わいながら時折大きな目を細め頬を緩ませ、愛実は幸せそうにタルトを食べるなと思った時

「幸せ」

 同時に彼女の声が耳に届き俺が幸せを感じる。
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