こんなのアイ?




 パスタを食べ終える頃、悠衣がふと洩らす。

「人生は変化するものだな…ずっとそのままということはない」
「何かあった?」
「あったと言えばあった。契約だからあり得ることだがブレントが専属のデザイナー契約の更新をしないと言ってきた」
「えっ…それって大変なことじゃないの?」

 あのお正月のバー以来会っていないブレントを思い浮かべる。

「悠衣の会社にとってもブレントにとっても大変なことに思えるけど…」
「そうだな…だが、2年毎の契約更新だからあり得るんだ」
「そう…ブレントはアメリカに帰るのかな?」
「さあ、その辺りは何も聞いてない。働く環境やライフスタイルを変えたいとは言っていたが詳しくは知らない」
「専属デザイナーって何年やってたんだっけ?」
「8年」

 8年か…8年あれば人生に変化というのは十分あり得るよね…私自身の20~28歳と考えるとよくわかる。

「最近いつ会った?」
「ブレントと?お正月のバーが最後なの…ずっと会っていない。克実はちょくちょく会ってるようだけどね」

 それからタルトを食べに店を移動する。予想通り、季節のタルトはストロベリーのタルトと甘夏みかんやハッサク、デコポンなどの柑橘類たっぷりのオレンジタルトがメニューにあり、その2つを注文する。

「悠衣、ありがとう。こんなの平日に贅沢だな」
「こんなのって?タルト?」
「タルトも、悠衣とのデートの時間も…どっちも贅沢」
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