こんなのアイ?




 そこから通信講座で医療事務を学んだ。保険証の違いなど基本的なことは日本社会をよりよく理解することにもなり興味深いものでスムーズに学習を進められる。正月に短時間会っただけの愛実には会わないと決め準備をする。

 契約更新しないと悠衣に伝えた時、契約社会である海外のことにも詳しい彼はすぐに受け入れてくれた。ただ不思議なことに、どこから僕がフリーになったと情報が漏れたのか1ヶ月もしないうちに大手アパレルブランドからノベルティーのブレスレットデザインの依頼がきた。ひょっとして悠衣?僕が仕事に困らないようにさりげなく漏らした?悠衣に聞いてみると

「良かったじゃないか。俺は知らないぞ」

 と知った顔で笑っていた。僕と悠衣のfriendshipに変わりはないと確信した瞬間だ。

 クリニックで初めての打ち合わせがある日、僕は悠衣に電話を掛けた。僕が克実に感化された経緯を丁寧に説明する。悠衣は仕事中で忙しかっただろうが、そんな気配を微塵も感じさせず穏やかに聞いてくれる。そして愛実と一緒に働くが、彼女は今まで何も知らないこと。僕は彼女にアプローチしないことを伝え

「悠衣、間違っても…くれぐれも愛実を疑ったり責めることはしないで。絶対に何も起こらない。言いたいことは僕と克実に言って。愛実には何も言うことないんだよ」

 と念をおすと悠衣は

「ああ、約束する。子どもの若い父親たちから愛実を守ってくれよ」

 そう言って電話をきった。よし、愛実の驚いた顔を見に行こう。

 新しい人生の始まりだ。よろしくね、中埜兄妹。


幕間:ブレント完
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