こんなのアイ?





「悠衣はお仕事どう?」
「大きくは変わらないが、今期はソーシャルメディアに力を入れようと思って…まだそこが手探り状態」
「時代に合わせてってこと?」
「ああ、高級ジュエリーは実物を見て手に取ってみないと購入しないという固定観念を崩していけるくらいの発信力を目指す」

 愛実はゆっくりとグラスを傾け美味しそうに水割りを飲むとにっこり笑う。

「難しいことだと思うけど悠衣なら出来るよね」
「愛実が思う難しいところはどこだ?販売する側じゃない者の意見としては」
「えー私、高級ジュエリーに縁のない素人よ」
「それがいいんだ。ひとつでも聞かせて」
「そうだなぁ…」

 グラスの水滴を指でなぞりながらしばらく考えた彼女は

「高級な物をいかに安全に届けるか、万が一の保険は?先に支払ってもきちんと物が届けてもらえるまで不安だし、会社側は商品を先に送ったらきちんと支払いされるか心配よね」

 至極真面目に答えてくれる。

「その通りだな…買ってもらったあとも大変だ。いま発信と同時進行で考えている部分だが、発信より先に考えるべきだな…愛実は?今日ブレント以外の人たちはどうだった?」

 日常的な会話、スリルがあるわけでもない普通の会話。それを当たり前のように共有する幸せ。そういう幸せを愛実が俺に与えてくれる。
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