こんなのアイ?




 今夜はこんなものか…時計を見ると7時前。金曜だったら逃げられないだろか…猫目を思い浮かべながらコートを手に会社を出る。

 愛実のマンションに着きとりあえず車内から電話をかけてみようと思った時、見慣れた長身の男がマンションに入って行く…ここにブレント?彼のマンションはここから駅を挟む位置で徒歩15分余りだが…以前から知り合いということはなかったはず。しばらくたってもブレントは現れない…ということは部屋に入った?愛実の?それとも他の誰か?

 愛実かブレント、どちらに電話をかけるか迷った末にゲスト用のパーキングに車を止めて直接訪ねることにする。部屋を確認しておいた自分を誉めながらエントランス外で愛実の部屋番号とインターホンを押した。

‘…はぃ?’
「愛実、俺」
‘……悠衣?’
「ああ。食事に行こう」
‘…ごめんなさい、急にはちょっと…’
「ブレントか?」
‘…’
「ここに入って行くのが見えた」
‘………悠衣…上がってきて…ご飯まだなら食べる?’

 思いがけない誘いを受け、何か甘いものでも買ってくれば良かったと思いながらエレベーターで5階に着く。彼女の部屋のインターホンを鳴らそうとした時…カチャ…ドアがブレントによってゆっくり開けられた。

「Hi,Yui.いらっしゃい」
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