空の表紙 −天上のエクレシア−

少年と剣








「白兎さーん!
お食事の時間ですよー!」

「おーう!キャサラちん
あんがとー!」

明るい木漏れ日の中
白兎は薪割り斧を
切り株に突き立てて大汗を拭う



―― 予想外だった
流刑地と言えば
誰でも想像するイメージがあるが
ここはそんな物とはかけ離れていた

豊かな森。質素だが清潔な寝床と食事
ただ…やはり労働はキツい
開梱されて居ない鬱蒼とした森を
動かなければならない

そしてここは
何か強力な魔術でもかけられているのか
法術が使えないのだ


キャサラは言う

「磁気が強いですからね
ここは」

「磁気?」

「はい
元々海底火山が冷えて島になったので。ある場所などは
方位磁石も使えません」


――しかし、
最大の問題
「外からの情報が一切入って来ない」
現実は、かなり堪えた


(街は…あの国は今どうなってしまうんだ…


「白兎さん…どうしたのです?」

「んー。ただ…」

「ただ?」

「城ん中とか、街とか…
どーなってるんかなあっ…て」

「…」

「うお。ごめんね。
こんな事聞かれても
キャサラちんが困るね
おっし。ごっそさんでしたー!」


軽く微笑み会釈して去るキャサラ
いい人だがやはり監守なのだなと
時折思わせる空気を持つ人だ


(ま。ここまで良くして貰って
文句いってちゃバチ当たるか
打据えられたり…
メシ食えなかったあの頃に比べたら
天国だ


―――青の王が統べる前のあの国は
いつも戦乱に明け暮れていたから




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